田舎町で育った、サッカー少年の夢僕の出身は静岡県西伊豆町という、本当に田舎の町です。同級生が幼稚園から中学校までずっと変わらないくらいの(笑)。でも、そんな環境だったからこそ、自然の素晴らしさや人とのつながりの大切さを肌で感じることができました。特に両親の存在は大きくて、父は偉大な存在というより、身近な仲良しのおじさんって感じでした(笑)。ただ、僕や兄弟のことは常に一人の人間として向き合ってくれて、やりたいことには全力で応援してくれました。そんな田舎育ちの僕が人生で初めての大きな挑戦をしたのは、強豪校のサッカー部に入ることでした。結果は...というと、トップチームには上がれず、人生初の大きな挫折を味わうことに。プロになれないという現実を受け止められず、今思えば本当にやさぐれてた時期でした。看護師として、もう一度の挑戦将来のことなんて全く考えてなかった僕は、進路に迷ったとき「人と関わる仕事がしたいな」って漠然と思いました。色々調べているうちに「看護師」という道を見つけ、東京都立看護学校に入学することになります。正直、看護学生時代の僕はお世辞にも「いい生徒」じゃなかったです。国家試験には合格できましたが、どこかサッカーを諦めた自分を引きずったままで、勉強に真剣に向き合えていませんでした。その「ツケ」は社会人になってから回ってきて、就職先の病棟では使い物にならない新人という立場に。同期との差がどんどん開いていく焦りもあって、看護師を辞めようかと真剣に考えた時期もありました。でも、そこで思い出したのが、サッカーでの挫折のときの後悔でした。「今度こそ本気でやってみよう」って決意して、夜勤明けも休日も勉強漬けの日々を送りました。そうしたら半年くらいで少しずつ周りの反応が変わってきて、なにより僕自身が看護の仕事の面白さを実感できるようになってきました。訪問看護との出会い、そして決断3年くらい病棟で働いて、ふと「これからどうしようかな」って考えたとき、なんとなくもの足りない気持ちがありました。特に終末期の患者さんへの関わり方に疑問を感じることも多くて。そんなとき、実習で経験した訪問看護のことを思い出して、5年目を終える頃に新しい挑戦を決意したんです。実は訪問看護を選んだ理由って、そんな大それたものじゃなくて(笑)。実習のときの経験が単純に楽しかったんですよね。特に利用者さんやご家族とじっくり関われるところに「これいいな」って思ったくらいの単純な動機でした。でも、その決断を周りに話したときの反応は結構厳しかったです。看護師長からは「5年目じゃ通用しないよ。10年は経験積まないと」って言われました。まぁ、おーそうなんだ、くらいの気持ちで(笑)。同期や先輩からも「準公務員みたいな今の職場辞めるの、もったいなくない?」って心配されました。それに10年くらい前って、訪問看護は今みたいにメジャーじゃなかったんです。特に男性看護師の採用を断る事業所もあるような時代で、ある意味、時代に逆行するような選択だったかもしれません。見つけた自分の居場所でも、実際に始めてみたら、なんというか...すごく自然な感じでした。最初の訪問のことは正直あんまり覚えてないんですけど(笑)、なんとなくイメージ通りというか、自分に合ってるなーって感覚はありましたね。病棟との違いで特に良かったなって思うのは、利用者さんやご家族が「こうしたい」って主体的に考えて、それに私たち支援側がすり寄っていけるところ。病院だとどうしても病院側が主導権握っちゃう感じがあって、それにずっと違和感があったんです。あと、夜勤がないってのも自分には合ってて、体調もすごく良くなりました。印象に残ってる出会いもたくさんあるんですけど、特に心に残ってるのは白血病末期の方との関わりです。その方、俳句が大好きで友達と楽しむのが趣味だったんですけど、外に出られない状態で。それで「じゃあ、家で俳句大会やっちゃいませんか?」って提案して。看護師、ケアマネさん、ご家族みんなで参加して開催したんです。体調は万全じゃなかったけど、その方がしゃんとして楽しそうにしてた姿は今でも忘れられないです。亡くなった後にご家族からいただいた感謝の言葉も、すごく心に残ってます。サッカーと看護、つながる想いこの経験から学んだのは、訪問看護って単独でやるものじゃないってこと。ご家族が主体となって、それを私たちがサポートしていく。そのために周りの人たちを上手く巻き込んでいくのが大切なんです。これって考えてみると、昔やってたサッカーにすごく似てるなって思うんです。チームプレーっていう点で。状況や目標に応じて、自分が前に出るべきときと、周りに合わせるべきときがある。利用者さんの「こうなりたい」っていう目標に向かって、チームでアプローチしていくところなんか、まさにサッカーでの経験が活きてるなって感じます。やっぱり、今思えばあの時の転職の決断は間違ってなかったなって思います。たまに「あの時、もっと経験積んでからにすれば?」って言われた声が頭をよぎることもあるんですけど(笑)。でも、自分の感覚を信じて飛び込んでよかった。それが今の自分につながってるんじゃないかなって思います。